格差社会における 闇バイト の発生 衆議院議員 まつばら仁 東京26区(目黒区・大田区)

社会問題となっている若者の 闇バイト の背景には、経済的な苦境にある若者に寄せる思いと、社会の格差が越えられないものになりつつある現状への危機感があると思っております。そこで、2つの質問主意書を12月17日に提出しました。その政府答弁を受け取りましたので、国民の皆様に共有させていただきます。

いわゆる「 闇バイト 」問題に関する質問主意書

政府は十一月二十二日の臨時閣議において、総合経済対策を決めた。その中に、首都圏を中心に、相次いで発生している、いわゆる「闇バイト」に端を発した凶悪強盗事件に対処する施策も含まれている。この施策には、警察による相談対応体制の拡充や取締りに必要な体制の確保などが含まれている。

いわゆる「闇バイト」に端を発した凶悪強盗事件は、人が殺される事案が発生するなど社会不安を高めている。日本の安全神話が崩壊したと言われて久しいが、それでも、日本より治安が良いと評価される国はそれほど多くはない。しかし、いわゆる「闇バイト」を通じた若年層の意図しない犯罪関与が深刻な社会問題となっている現状を放置すれば、日本社会の不安定化と犯罪の蔓延が進み、治安のさらなる悪化を招きかねない。

いわゆる「闇バイト」の問題が、若年層の意図しない犯罪関与と密接な関係にあることが周知されてきた中で、その背景に、経済格差とその固定化傾向が影響しているのではないかとする指摘もある。そこで、次のとおり質問する。

一 経済的困窮者の「 闇バイト 」への関与について

いわゆる「闇バイト」の問題で、金銭的困窮者が不法行為に誘導され、加害者であり、被害者となってしまう現状があるとされる。このように経済格差が「闇バイト」の問題に与える影響について、政府として、具体的な調査・分析を行ったことがあるか。ない場合は、今後、そのような調査・分析を、政府として行うことを検討するか明らかにされたい。

二 若年層の犯罪防止とセーフティネット整備について

1 若年層の犯罪関与を防ぐためには、経済的貧困層と若年層に対する経済的セーフティネットの整備、充実が有効と考えるが、政府は、現在の施策で十分と考えているか。

2 前項において、政府が、不十分と認識している場合、政府として具体的に検討している対策があるか。そのような対策があれば明らかにされたい。

三 いわゆる「 闇バイト 」に対する警察対応について

1 これまで、「闇バイト」のような非合法事案に関する人員募集は、いわゆるダークネットのような一般人が目にしにくい環境で行われることが多かった。しかし、近時は、他の求人募集と同様の募集方法を通じて、一見割の良いアルバイトとしての募集が行われる傾向にある。このように応募者に責められる要素がなく、誰もが被害者であり加害者となり得る巧妙な犯罪行為に対し、これまでの捜査では対応が困難なはずである。政府としても、おとり捜査を含めたこのような巧妙な犯罪に対処するための法改正を含めた対応を検討すべきと考えるが、政府の見解如何。

2 これまで、警察行政は、交通安全教育など子供の交通安全認識を高める事業を行ってきた。これからは、このような教育啓発活動を、「闇バイト」など、一見割の良いアルバイトへの応募が犯罪に巻き込まれるリスクをはらむ問題や、当職が率先して対策を求めてきた悪質ホストクラブの売掛金問題のように、恋心など人の弱い所に付け込み公序良俗に反する契約を無意識的に結ばせる詐欺的行為の問題などにも広げていくべきと考えるが、政府の見解如何。

いわゆる「 闇バイト 」問題に関する質問に対する答弁書

令和6年12月27日

一 経済的困窮者の「 闇バイト 」への関与について

お尋ねの「経済格差が「闇バイト」の問題に与える影響」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

二 若年層の犯罪防止とセーフティネット整備について

お尋ねについては、御指摘の「経済的貧困層と若年層に対する経済的セーフティネットの整備、充実」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和六年十二月三日の参議院本会議において、石破内閣総理大臣が「貧困や若者の不安定な就労といった問題につきましては、経済的に困窮する方に対する自立に向けた包括的な支援、ハローワークにおけるきめ細かな就職支援、正社員への転換に取り組む事業主の支援などを行っておるところでございます。・・・引き続き、治安対策や経済的に困窮する方への支援などに積極的に着実に取り組んでまいります。」と答弁したとおりである。

三 いわゆる「 闇バイト 」に対する警察対応について

1 政府としては、御指摘の「闇バイト」に係る犯罪について、捜査員が「闇バイト」の募集に応じ、当該募集に係る関係者と接触した際に、架空の本人確認書類等を使用する手法を用いた捜査を早期に実施することを含め、効果的な対策の在り方を不断に検討し、必要な取組を推進しているところである。

2 御指摘の「闇バイト」及び「悪質ホストクラブ」に関する啓発活動については、例えば、都道府県警察において、大学や高等学校で講義を行うなどしているほか、政府において、犯罪に加担しようとする者に対するインターネット等を活用した呼び掛け等の取組を行っているところであり、政府としては、これらの取組を引き続き推進してまいりたい。

世代を超えた格差の固定化に関する質問主意書

日本における経済的格差の拡大は、近年大きな社会問題となっている。その中でも「世代を超えた格差の固定化」は、国民の公平感を損ない、社会を不安定化させ、社会の持続的発展可能性を揺るがしかねない深刻な問題である。

我が国においても、「努力したものが報われるべきである」という考えは、多くの人が持っているはずであるから、本来、個々人の努力の成果が公平に評価され、「世代を超えた格差の固定化」しない仕組みが担保されていればと考えるが、そのような評価制度の構築は、現実には困難というほかない。

政府は二〇二五年度の税制改正において、親や祖父母が結婚・子育て資金を子や孫に一括で贈与する際、一千万円までを非課税とする特例の延長を検討していると報じられている。しかし、政府の税制調査会は二〇二三年六月の中期答申において、この制度が「世代を超えた格差の固定化」につながる可能性を懸念し、制度の適用実態を踏まえた再検討を求めている。

もっとも、世代間で金融資産の蓄積に差が存在することは否定することができず、税制上の優遇を設けて、金融資産を有している親や祖父母が結婚・子育て資金を子や孫に一括で贈与し移転する仕組みは、少子化傾向に変わりがない現状からはやむを得ない面もある。

資本主義経済圏にある我が国において格差が発生することは避けられない。問題は、「世代を超えた格差の固定化」と特定の職業分野における構造的な低賃金であると考える。そこで、次のとおり質問する。

一 政府として、日本社会における経済格差について、また、世代を超えた格差の固定化について、どのような現状認識を有しているか明らかにされたい。
また、経済格差や世代を超えた格差の固定化に関する現状における課題に対して、政府として具体的に実施している政策があれば明らかにされたい。そのような施策がなければ、今後、そのような施策の検討を行うか政府として明らかにされたい。

二 世代を超えた格差の固定化の一例として、親の資金力次第で学習塾への通塾など教育の機会に不均衡が生じている現状は、相対的に高収入を得られる可能性が高い雇用や職業にアクセスする機会の平等が不当に阻害されている。そのため、満足な収入を得られない若者について、一般論として個人の自己責任を強調する土台は失われており、構造的格差の実態を踏まえた是正策が必要と考えるが、政府の見解如何。

三 新型コロナウイルス感染症流行の最中、エッセンシャルワーカーの労働力確保が社会問題とされた。その際、福祉従事者のように特定業種の所得の低さが問題とされた。現在も、介護士や保育士、コメディカルと呼ばれる医療関係者の低賃金が大きな問題となっている。
このような雇用分野における構造的低賃金問題について、政府として、何か具体的な解消策を実施しているか。 

世代を超えた格差の固定化に関する質問に対する答弁書

令和6年12月27日

一及び二について
  
格差の認識については、令和六年十二月三日の衆議院本会議において、石破内閣総理大臣が「格差や貧困を測るための国際的な指標には様々なものがありますが、我が国におきましては、近年、経済状況の好転や年金等の社会保障、税による再分配の効果により、これらの指標は基本的には横ばい又は改善傾向にあると認識いたしております。」と答弁したとおりである。また、御指摘の「世代を超えた格差の固定化」については、様々な議論があり、一概に申し上げることは困難である。政府としては、格差が固定化されず、人々の許容の範囲を超えたものとならないことが重要であると考えており、税制や社会保障による所得再分配に加え、高等教育の無償化等を含む全世代型社会保障の実現、ひとり親家庭への支援、子供の貧困対策、同一労働同一賃金の実現等を通じた非正規雇用労働者の待遇改善、最低賃金の全国的な引上げ等に取り組んでいるところである。

三について
  
お尋ねの「具体的な解消策」については、令和六年十二月四日の参議院本会議において、石破内閣総理大臣が「医療、介護、福祉分野につきましては、本年度の報酬改定において賃上げのための措置を講じており、これが最大限に活用されますよう、提出書類の簡素化や幅広い周知に取り組んでおるところでございます。加えて、今般の経済対策におきましても、生産性の向上や職場環境の改善など、更なる賃上げを目的とする支援策を盛り込んでおります。保育分野につきましては、・・・今般の経済対策に大幅な処遇改善を盛り込んだところでございます。今後、この措置が迅速かつ確実に事業主から保育士に行き渡るように、実績報告を求めますとともに、保育所などの給与状況を明らかにするなど、経営情報の可視化、見える化についても進めてまいります」と答弁しているとおりであり、政府としては、これらの取組を通じて、御指摘の「介護士や保育士、コメディカルと呼ばれる医療関係者」について、更なる賃上げにつながるよう取り組んでまいりたい。

政府の対応

闇バイトによる犯罪が相次ぐ中、警察庁は捜査員が架空の人物の運転免許証などを使って闇バイトに応募し、犯行グループに接触する「仮装身分捜査」の運用のガイドラインを策定し、強盗や詐欺などの捜査に限定して実施するよう全国の警察に指示しました。 SNSなどで行われる闇バイトの募集をめぐって、警察はこれまで捜査員であることを隠して闇バイトに応募する捜査を試みてきましたが、指示役から本人確認のためだとして運転免許証などの証明書の提示を求められることが多く、捜査が行き詰まって検挙につながるケースはほとんどありませんでした。 こうした中、警察庁は捜査員が架空の人物の運転免許証などを使って闇バイトに応募する「仮装身分捜査」の運用のガイドラインを策定し全国の警察に通達を出しました。

NHKnews:闇バイトに応募する「仮装身分捜査」運用ガイドライン策定 [2025年1月23日 12時14分]

まつばら仁の意見

闇バイトの背景にあると考えられる社会の格差については、政府の認識と危機感は十分とは言い難く、引き続き、この社会の本質的な問題に光を当ててまいりたいと思います。

闇バイトに対する警察の捜査については、私が質問主意書で提案したように、「仮装身分捜査」がトクリュウ型犯罪に限定して運用されるに至りました。

北風と太陽の、北風部分の施策ではありますが、経済的苦境に陥った若者が、意図せず闇バイトに手を染めなくて済むように、政治の立場から取り組みを続けてまいります。

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