今般、第31吉進丸が歯舞諸島の近海において、ロシア国境警備隊から銃撃を受け、乗組員1名が死亡、3人が連行される事件が発生した。 ロシア側は、領海侵犯と密漁の容疑でロシア国内法に基づき起訴すると言っている。 しかし、重大なことは、この水域は、歴史的にも日本固有の領土領海であり、ロシアは昭和20年8月15日の終戦後に、日ソ不可侵条約を一方的に破って北方四島を不法占拠したまま懇意地にいたっているということである。 つまり、本来日本の水域であるはずのところをロシアが不法占拠して今日に至っているのである。 しかし、日本は外交において、戦後、自己主張をしないという姿勢で今日まで至っており、ロシアの不法占拠を半世紀以上許してしまったということである。 現実には北方四島にはロシア人が住み、すでにその3世の世代が生活を始めるにいたり、この領土問題はロシア側からすれば、本来は不法占拠であっても、現在は既得権化しているといいたいところであろう。 しかし、我が方からすれば北方四島変換は戦後一貫した目標であり、私にとっても心の師である、末次一郎先生がその人生を賭して闘い続けてきたテーマである。また今回の事件はわが国の主権と人権に関わる、いわば独立国にとって譲歩のできない問題である。 今回、この事件を受けて、わが国政府は断固として抗議をロシア側に行っているが、それは当然である。 むしろ私はそれに加えて、わが国の為しうる二つの行動案を示し、外務省にも働きかけたいと考える。 ひとつは、今回の事件と北方四島の問題をハーグの国際司法裁判所に提訴することである。ロシアが応訴しなければ、調停にせよ裁判にせよ成立はしないが、少なくとも国際社会に再度、この不法占拠について訴えることは必要であるし、本来、日本の領海である場所で日本漁船がロシア国境警備隊に銃撃拿捕されたことは、そうした場で強く批難されるべきであろう。 二つ目には、我々は日本の国内法に基づき、このロシア側の行為に対して被疑者不明のままでもいいから刑事事件として起訴するべきと考える。 それくらいのことが行い得ぬようでは、日本人は誇りや自負を持ち得ぬと考えるものである。 今回の事件は大変に無念の出来事であるが、同時に従来の言われっぱなし日本外交から、毅然たる日本外交へ転換できるかの試金石として、その対応がきわめて重大であることを指摘したい。